横浜市青葉区、都筑区、緑区、港北区、川崎市の皆さんこんにちは。
横浜市青葉区市ケ尾町にある夕やけの丘動物病院 獣医師の加藤です。

膝蓋骨内方脱臼とは、膝蓋骨(膝のお皿のような骨)が、滑車溝(大腿骨にある溝)から内方へ変位してしまう状態のことをいいます。膝蓋骨は膝を曲げ伸ばすときに滑車溝上を移動することで膝関節の運動を滑らかにする役割がありますが、膝蓋骨が変位することによりこの動きが障害されます。さらに、膝蓋骨の変位により周囲の筋肉や骨にも力が加わることで、大腿四頭筋の変位や大腿骨のアライメント(ねじれ)も生じます。膝蓋骨内方脱臼は主に小型犬やトイ犬種に多くみられますが、全犬種でみられる病気です。

原因は大きく分けて先天性と外傷性の2つがありますが、多くの場合は成長期に症状が出ることが多いです。主な症状としては、片足を上げて歩く、ケンケンしたりびっこを引いたりする、歩いているときに片足を伸ばす、などといった機能障害と、足を触ると痛がる、キャンと鳴く、散歩中に歩きたがらない、などといった疼痛反応があります。膝蓋骨内方脱臼は症状により４つのグレードに分けられており、膝蓋骨の位置は正常だが手で簡単に外せるグレードⅠ、膝の曲げ伸ばしにより膝蓋骨が外れたり戻ったりを繰り返すグレードⅡ、膝蓋骨が常に内方に変位しているが手で戻すことができるグレードⅢ、膝蓋骨が常に内方に変位しており手で戻すことができないグレードⅣがあります。

診断は、歩様検査、触診、およびX線検査により行います。治療法は症状のグレードや年齢によって異なりますが、成長期である若齢犬や跛行が日常的にみられる場合には外科手術が推奨されます。

膝蓋骨内方脱臼の治療実績

1、左後肢跛行にて来院のケース

トイ・プードル、1歳8か月、避妊雌

散歩中に左後肢を挙上するとのことで当院整形外科受診。X線検査では明らかな骨の変形は認められず、触診により両側膝蓋骨の内方変位を確認しました。来院時X線画像：左右の膝蓋骨の内方変位を認めました。

診断結果

左右膝蓋骨内方脱臼グレードⅡ

治療内容

外科手術。左右の膝蓋骨で内方脱臼がみられましたが、今回は症状として跛行がみられる左後肢の手術を先に行い、左後肢の治療終了後に右後肢の手術を実施することになりました。外科手術は、大腿骨の溝を深くする滑車溝造溝、大腿骨と脛骨のアライメントを矯正する脛骨粗面移植、膝関節の内側にかかる力を緩める内側リリース、外側に引っ張る力を強くする外側縫縮の４つを組み合わせて行いました。

①滑車溝造溝
造溝前(左)と造溝後(右)

②脛骨粗面転移
膝蓋靭帯の付着部である脛骨粗面を外側に転移させ、ピンで固定する。

③内側リリース

④外側縫縮

術後X線画像：膝蓋骨が大腿骨の滑車溝にはまっていることが確認できました。

術後管理と予後

術後1週間は絶対安静とし、その後は運動制限を設けて管理、術後4週間で徐々に運動制限を解除としました。触診およびX線検査でインプラントにも明らかな異常所見は認められず、経過良好につき術後10週間で通常通りの生活をしていただくようになりました。

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