急性膵炎

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横浜市青葉区、都筑区、緑区、港北区、川崎市の皆さんこんにちは。
横浜市青葉区市ケ尾町にある夕やけの丘動物病院 獣医師の嶋崎です。

ここでは、犬の消化器疾患として多い「急性膵炎」についてのご説明を致します。

急性膵炎について

膵臓が様々な要因によって障害を受けることにより、膵臓の腺房細胞という細胞内で様々な炎症性サイトカインや酸化的ダメージを生じます。これらが蛋白質を分解する消化酵素であるトリプシンを活性化します。トリプシンの活性化によりそれ以外の膵酵素が活性化し、その結果、膵臓の自己消化を起こすことで重症化します。さらに膵炎が様々なサイトカイン(TNF、インターロイキン、血小板凝固因子等)を活性化すること(サイトカインストーム)により、重篤な多臓器不全を引き起こし、場合によっては死に至るケースも少なくない疾患です。

急性膵炎のリスク因子

小型犬
肥満傾向
消化器疾患の病歴を持つ
糖尿病、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症
高リポタンパク血症
外科手術
腐敗した食事の摂取

急性膵炎の臨床症状

嘔吐
元気消失、活力低下
腹部痛
脱水
下痢
発熱

急性膵炎の診断

以下のような検査により総合的に判断し、診断をしています。

血液検査

好中球増多症、炎症に伴う貧血や血小板の減少を生じることもあります。重症例では様々な全身性の障害を認めます。腎数値の上昇、肝酵素の上昇、ビリルビン値の上昇を認めることがあります。

尿検査

顆粒円柱を認める場合は全身性の波及に伴う尿細管の障害を示唆します。

X線検査

膵炎症例の25%程度の検出率。膵臓にmass状の陰影、あるいはその周囲に液体の貯留を認めることがあります。

超音波検査

膵炎症例の68%の検出率。液体の貯留や膿疱を検出する際は超音波ガイド下で細胞診を行うことができます。

膵特異的リパーゼ測定(Spec cPL)

膵臓の腺房細胞に障害が生じなければ血中に存在しないと考えられています。膵炎が存在する患者ではほぼ高値の結果となります。ただし、膵炎が存在しない患者でも高値となる可能性があるため、この検査だけで診断をすることはできません。一方で、正常であった場合は膵炎ではない可能性が非常に高いと考えられます。

急性膵炎の治療

以下に挙げられる様々な治療法を組み合わせて治療を行います。

静脈輸液

急速な晶質液の輸液により、膵臓の微小循環の還流を維持することができます。これにより浮腫性の膵炎から壊死性の膵炎へ移行することを防ぐことができると示されています。

鎮痛

明らかに疼痛を示さない動物も含め全例に鎮痛を行うことが推奨されています。通常使用される薬剤としてオピオイド、ケタミン、リドカインが挙げられます。鎮痛を行うことにより、膵炎で最も多い臨床症状である嘔吐が抑制されることもあります。

制吐

膵炎は重度な嘔吐、悪心を示すことが明らかになっているため、制吐薬の投与は全例で行うことが推奨されます。使用するのは制吐作用が強いマロピタントが第一選択です。マロピタントは腹腔内及び中枢にも作用し制吐作用を有し、また消化管運動を抑制する作用が無いこと、内臓痛に対する鎮痛作用を有することから、最も適する制吐薬であるといえます。

抗生物質療法

軽症例においては感染を生じる可能性は低く、抗生物質の投与は必要ではありません。抗生物質の投与を必要とするのは、「敗血症がある場合」「感染性の腹膜炎を併発している場合」「重症例に対する予防的使用」です。

制酸剤

消化管潰瘍を起こしている場合に使用しますが、膵炎の治療に対して直接的に必要ではありませんが、多くの膵炎に罹患した動物はストレス性の胃潰瘍を生じることがあります

ブレンダZ

LFA-1(白血球機能抗原)を阻害することにより、好中球が内皮細胞に接着し病変部位に遊走することを防ぎ、抗炎症作用を有すると考えられています。このような作用機序から、膵炎の初期、即ち浮腫性の膵炎に対して有効であると考えられます。ブレンダZの使用により膵炎による死亡率が半減したとされるデータも存在します。

膵炎の栄養管理

膵炎の動物に対して、かつては絶飲絶食が推奨されていましたが、現在は否定されています。食事を与えることで嘔吐や疼痛が誘発される場合を除いて、早期に食餌を再開することが非常に重要です。また、静脈栄養(血管から栄養を摂取すること)は合併症のリスクが高いため推奨されていません。自力で食物を摂取できない場合は、一時的に食道チューブを設置することがあります。自力採食が可能な場合は少量ずつ頻回に低脂肪食を与え、吸収を促します。

お問い合わせ

夕やけの丘動物病院

電話番号: 045-530-9100
診療時間:9:00〜12:00、16:00〜19:00
休診日:祝日の午後
住所:神奈川県横浜市青葉区市ヶ尾町517-25

あざみ野どうぶつ医療センター

電話番号:045-530-5300
診療時間:10:00~13:00、16:00~19:00
休診日:月曜日、日曜日の午後、祝日
住所:横浜市青葉区美しが丘5-13-1 GRAN hillside 欅 1F

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