猫の皮膚糸状菌症

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横浜市青葉区、都筑区、緑区、港北区、川崎市の皆さんこんにちは。
横浜市青葉区市ケ尾町にある夕やけの丘動物病院 獣医師の藤本です。

ここでは、猫の皮膚疾患として多い「皮膚糸状菌症」についての説明と、よく見られる症状、原因、治療方法について説明いたします。

猫の皮膚糸状菌症について

猫に感染性を示す皮膚糸状菌は何種類もありますが、80〜98%はMicrosporum canisが原因真菌と言われています。

皮膚糸状菌症は人を含む多くの動物に感染する人獣共通感染症です。人では一般的に痒みのある点状〜リング状の赤い皮疹を作りますが、小さい子どもや免疫の弱い人に対しては痕の残る皮膚病を起こすなど重症化することがあり、ペットに発生した場合には根治まで治療をすること、環境衛生を徹底することが重要です。皮膚糸状菌は環境中で1〜7年感染力を保持すると言われています。また、猫では無症状の保菌者(キャリア)となることがあるため、治療は症状の改善だけでなく検査で陰性となるまでしっかり行う必要があります。

皮膚病の出ている場所や症状の出方の観察、Microsprum canisを検出する特殊な光を当てるウッド灯検査、毛を顕微鏡で観察する毛検査、培養検査、PCR検査などを複合して診断します。

よく見られる症状

毛切れによる切り株状の脱毛(裂毛)
フケ
ペルシャ猫などの長毛種に毛穴に沿ったプツプツがてきることがある

皮膚糸状菌症になる原因

皮膚糸状菌は動物同士や土壌を介して感染します。中でもMicrosprum canisは動物の毛とフケを好む菌です。したがって、感染動物との接触が主な原因となります。

皮膚糸状菌症の治療方法

基本的には抗真菌薬を1ヶ月程度飲むことが治療の中心になります。加えて、環境中の真菌を減らすためにシャンプーを行ったり、補助療法として塗り薬を使うこともあります。長毛種では、毛刈りをすることで治療期間の短縮が見込める場合もあります。

よくあるご質問

皮膚糸状菌は人や他の動物にうつりますか?

はい。多くの動物に感染する人獣共通感染症です。

皮膚糸状菌は何で消毒したらいいですか?

塩素消毒が有効ですが、完全に殺滅することはできません。落ちた毛やフケを物理的に取り除くことが重要です。

シャンプーや塗り薬だけで治りますか?

難しいです。毛穴の奥にも感染するため、飲み薬で治療しないと治し切ることができないのが通常です。

猫の症状がなくなったので、治療をやめてもいいですか?

検査で陰性になるまで治療を続けましょう。猫は無症状の保菌者になる可能性があります。

皮膚糸状菌症の治療実績

1、耳にカサカサができて掻いているケース

雑種、一歳未満

診断結果
ウッド灯で毛がアップルグリーンに光り毛の顕微鏡検査でボロボロになった毛を認めた。PCR検査にて陽性のため、皮膚糸状菌症(Microsprum canis)と診断。

診断結果
イトラコナゾールの内服薬で治療。4週経過後、臨床徴候改善のため培養検査を実施。陰性を確認して投薬終了。

予後
完治まで治療したため、その後の再発なし。

2、ワクチン接種のため来院された際に、偶発的に皮膚の脱毛とフケを発見したケース

猫(スコティッシュ・フォールド)、雌、2ヵ月齢。

考察
ワクチン接種のため来院された際に、後肢のかかと部分と耳介(お耳の翼部分)に脱毛と鱗屑(フケ)が出ていることに気が付きました。本人には明らかな症状は見られていませんでした。よくよくお聞きすると、脱毛は前からあったものが少しずつ広がってきているとのことでした。

2ヵ月という年齢で若齢であること、症状が拡大進行しているという経過、皮疹(皮膚症状)、皮疹の出ている部位から「猫の皮膚糸状菌症」を第一に疑い、その裏付けのためにウッド灯検査(特定の波長の紫外線を当てると特定の皮膚糸状菌に感染している毛がグリーンアップル色に発光します)・抜毛検査(病変部の毛を数本抜いて顕微鏡で観察します)・真菌培養検査(病変部の毛を培養してカビを同定します)を実施しました。

ウッド灯を当てるときれいなグリーンアップル色に光る毛が認められ、それらを顕微鏡で観察するとカビが感染して構造が壊れたボロボロの毛を確認することができました。また、真菌培養検査はMicrosporum Canisが陽性という結果となりました。

これらの結果から、皮膚糸状菌と診断致しました。

治療前の状態

診断結果
猫の皮膚糸状菌症

治療内容
患部の感染被毛を短くカットし、抗真菌薬(イトラコナゾール)の内服、抗真菌薬の外用薬を患部に塗布して頂きました。また、感染した被毛が付着していると考えられるご自宅の環境下の清掃と消毒を徹底して頂きました。

上記の治療を約1か月間実施し、毛が生え始めてウッド灯で被毛が一切光らなくなったところで再度培養検査を行いましたが、結果は未だ陽性でした。これは「まだカビがいる」という結果なので、悔しいですがここで治療をやめることはできません。

そこからさらに治療を継続し、治療開始から合計2ヵ月半でやっと培養検査が陰性となり、治療終了とすることができました。その後も再発を疑う様子はなく、現在も大変元気に過ごしてくれています。

治療後の状態

お問い合わせ

夕やけの丘動物病院

電話番号: 045-530-9100
診療時間:9:00〜12:00、16:00〜19:00
休診日:祝日の午後
住所:神奈川県横浜市青葉区市ヶ尾町517-25

あざみ野どうぶつ医療センター

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休診日:月曜日、日曜日の午後、祝日
住所:横浜市青葉区美しが丘5-13-1 GRAN hillside 欅 1F

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