当院が考える
「動物の福祉」

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はじめに

本ページは、当院のスタンスや心構えについて記したものです。私たちがどういう想いで診療を行なっているかについてご理解いただくことで、飼い主様の安心に繋げられれば幸いに存じます。なお、本ページに記載しております具体的対応事例については、一概に固定のサービスとして提供しているものではありません。対応方法はケースバイケースにより様々です。

動物の福祉について

動物たちのストレスをできるだけ取り除き、動物の生命を尊重しようという考え方を動物の福祉と呼びます。動物医療を行う当院にとって、それは、動物を家族(伴侶動物)として扱い、ヒト医療同様に動物の心に寄り添い、可能な限り怖くない・痛くない医療を提供することを意味します。

近年では、医療の視点のみならず、健康な状態をいかに維持するか、という視点からも、動物病院としてできることを模索しています。

通常の治療以外でも、例えば余命宣告をされたワンちゃんに対し、いかに余生を充実したものにするか、という考えも動物の福祉にあてはまります。高度医療が年々進歩していることは医療の選択肢が増える意味で良いことですが、できる限りの医療を尽くすことがその動物にとって最良の医療とは限りません。

私たちは、問題の根本的解決はできなくとも、新しい角度からの視点を取り入れることで、問題の解消はできることがあります。

人間と同等に感情豊かな彼ら・彼女らの心の機微を感じ、飼い主様とともに快適な時間を過ごしていただけるようサポートさせていただきます。

グリーフケア

動物の福祉の考えの中に、「グリーフケア」と呼ばれる概念があります。
グリーフとは、直訳すると「悲しみ」「慈悲」を表す言葉で、精神的ショックが原因で引き起こされる身体上・精神上の変化を指します。具体的には、不安や恐怖、悲しい思いや自責・後悔の念、罪悪感などです。グリーフを感じるのは人間だけでなく、動物たちも同様です。

例えば愛犬が大きな病にかかった時に、飼い主がショックのあまり元気を無くすと、その様子を見たワンちゃんも元気を無くす、ということがあります。これは飼い主様も、ワンちゃんも、グリーフを感じている状態です。

グリーフを感じるのは正常なことです。しかし、それが極端な程度にまで達したり、長期間続く、という場合には健康を害する恐れが出てきてしまいます。そこで人に対しても動物に対しても、グリーフをどう受け止めるかについてアドバイスさせていただいています。

グリーフケアはペットロスの際のサポートに留まらない

グリーフケアを、ペットロスの際のサポートと思われる方もいらっしゃると思いますが、その限りではありません。グリーフケアは動物が生きている時から行うものです。例えば、新しくご自宅に迎えたワンちゃんが緊張から粗相をおかす時、ご家族様の人間関係・仕事関係がうまくいっていないことが原因で動物が過度なストレスを感じ、異常行動をとる時など、グリーフケアが必要なケースは多岐に渡ります。動物にとっても、人にとってもグリーフは身近な存在であることを理解しておけば、「なぜこの子はこういう行動をとるようになったのか」を冷静に見つめ、対処できるようになります。

グリーフには段階がある

グリーフの心理過程には段階があります。日本グリーフケア協会では、グリーフの心理過程をこのように示しています。

1、ショック期
2、喪失期
3、閉じこもり期
4、癒し・再生期

なお、近年のワンちゃん、ネコちゃんは20年生きることも稀ではなくなってきました。
20年も人生を共にしたパートナーがこの世を去ってしまった時のショックや喪失感は計り知れません。その子を大事にしてきたからこそ深い悲しみに包まれることになりますが、振り返ってみると、失ったものより得たものの方がはるかに大きいはずです。深いグリーフは、その子への深い愛情の裏返しです。素晴らしい時間を飼い主様はプレゼントできたのです。その子にとっても、飼い主様にとってもとても幸せなことだと思います。
グリーフを乗り越えようとせず、ありのままを受け入れ、自分を責めないようにすることが、癒し・再生期に繋がります。

動物と飼い主様と当院の関係

動物医療がヒト医療と異なるのは、動物は言葉を話せないため、飼い主様が医療をどこまで行うかを決定する点です。

その中で、当院の役割は、飼い主様と動物が充実した時間を過ごしていただくこと、どのような結果になるとしても、飼い主様を守る、ということです。

最終決断の前には、当院からも考えられる選択肢とメリット・デメリットの提示を行い、判断の材料をお渡しさせていただきますが、実際に判断するのは飼い主様です。飼い主様の過去の経験、経済状況、動物の健康状態や性格などから、実際に選択する治療方法が決まるのですが、飼い主様が最終判断された決断は絶対に否定しません。

飼い主様と私たちは、愛犬・愛猫の幸せを願う一蓮托生の身です。

当院の「死」に対する考え方

私たち動物医療従事者は、死の場面を目の当たりにすることが少なくありません。死についても多く考えます。
死についてのお話は忌み嫌われる印象がありますが、生と死は一体のものですから、正面から向き合ってお話させていただきます。(気分を害する方は飛ばしてください)

当院では「死」について、動物たちが命を使い切り、犬生・猫生を閉じる大切なライフイベントだと考えています。

生きるものは例外なく最期の時を迎えますが、私たちの命は有限であるからこそ儚く、美しいのだと思います。もし無限に生きられるとしたら、私たちは今この時間を大切に過ごしていないはずです。時間の経過とともに変化するから、愛おしさを感じるのです。

少し異なる切り口からも説明します。
大きな病気にかかった時に「残り大体これくらい生きるだろう」、と宣告される余命というものがあります。(心の準備をしていただくことを目的に余命はお伝えしますが、過去データの平均値なだけで正確な数値を出すのは難しいです)

人は元気な時は余命など考えもしませんが、実はまだ気づいていないだけで、大きな病気が潜んでいたり、急病や事故などで急に亡くなることがあります。そう考えると、実は健康な人でも余命宣告を受けている人も、命の期限は決まっていないのです。

ここで一つ言えるのは、「生きている限りは、命は続く」ということ。
死に向かって生きる、というのではなく、「生きている今を生きる」。
わからないことに悩むよりも、今を充実させて生きることが、生を、死を、より意味のあるものにするのだと考えています。

スペシャリストのご紹介

夕やけの丘動物病院グループ

阿部 美奈子(あべ みなこ) 先生 
動物医療グリーフケアアドバイザー

グリーフケアを通して、ペットや飼い主の「心」を元気にする獣医師として活動。
グリーフとは直訳すると「悲嘆」。自分にとって大切な対象を失ったときに起こる自然な心身の反応のことです。 また、悲しみや嘆きという単純に2つの感情だけでなく、不安や心配、後悔や自責、他責や怒り、期待や失望など…さまざまな心身の反応として体験します。
どのようなお気持ちでもお一人で抱えることなくぜひお話しください。

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